この記事では、会社の破産(倒産)手続きのメリットとデメリット、その後の社長の生活や残せるお金、手続きに掛かる期間や費用など会社の破産手続きに関する疑問は概ね解消できる様にまとめています。
いつでも読み返せる様に、ブックマークしておいてくださいね。
会社破産のメリット・デメリット
会社をしっかり破産手続きするメリット
- 債権者も破産すると債権を損金で落とせるので最後の誠意を見せることができる
- 督促が止まる
- 個人保証していると個人の住所まで督促が来るが未然に防ぐことが出来る
- 法人に対する借金や税金は、その法人自体が消滅するので無くなる
- 従業員の給料を確保できたり、お給料を最大8割まで立て替えてもらえる
- 経営者の生活を安定させることができる
ポイント
- 個人保証していると後から登記している代表者の住所まで督促が来ることになる
- 債権を放置するよりも周りに迷惑をかけないので、経営者のやり直しが効きやすい
借金を個人保証(連帯保証)していると代表者が登記している住所まで督促がくるなどで結局、借金はその後も付きまとうことになります。
その事に気付いてから相談に来られて結局、破産手続きをされる方も多いのです。
解説
会社の破産手続きをしないで放置したままになってしまうと法的には債権が残っていることになり、税務上は経費にできないので債権者に迷惑をかけ続けてしまいます。
しかし、債権者は会社に破産してもらえると、その売掛金や貸付金を貸倒引当金という損金として落とすことでその分税金も安くなります。
破産手続きをしっかり行うことは、一番最後の誠実さを見せる方法にもなりますし、ちょっとでも残ってるものを配当で返せる可能性があります。
この後説明しますが、破産手続きが裁判所から開始されるのを「開始決定」と言いますが、この開始決定以降は借金や買掛金の督促が無くなります。つまり支出も無くなります。
更に開始決定以降は社長さんが次のお仕事で稼いだお金は全て自分のものにできるので、お金が貯まりやすい状況になるのです。
当事務所代表 森 弁護士/公認会計士の回答
確かにお金がかからない方法ではありますが、周りとの人間関係は壊れてしまいますし、登記している代表取締役の住所まで督促が来るため、結局後から破産の手続きにいらっしゃる方も少なくありません。
なので、私の立場からは夜逃げするのではなく、法人破産(倒産)の手続きをしっかり行うことを推奨します。その方がその後の生活が安定しますし、周りへの迷惑も最小限に留められるので経済的、精神衛生上良く、本人の為になると言えます。
弁護士に依頼するメリットは?
とても社長一人では出来ない様な複雑な手続きや交渉を専門家に全て任せることができるというのが、弁護士に依頼するメリットと言えます。
解説
会社を畳もうとするとリース物件や賃貸を借りていた場合、賃貸物件側との交渉が必要になります。
また破産するにあたって複雑な手続きがあって、整理しなければならないものも多いです。
何より破産手続きにおいては法律も複雑で暗黙のルールが多く、その暗黙の了解は地域の裁判所によって異なります。
地域の裁判所によって違う暗黙の了解
例えば、東京地方裁判所であれば、現金99万円までは破産の配当には使わなくて良いよと言ってもらえますが、大阪の地方裁判所になると、預金も含めて残して良いとと言ってもらえるなど、ややルールが異なります。
とても一人では出来ない量の作業になりますし、何よりその地域の裁判所の「暗黙の了解」を熟知しておく必要があります。
そのため、会社の破産手続きにおいて弁護士の協力は必要不可欠であると言えます。
会社を破産させてしまうデメリットは?
- 弁護士費用や、裁判所への予納金がかかる
会社のみを破産させた場合のデメリットは費用がかかることくらいです。
しかし、会社だけではなく経営者本人も破産した場合には次の章でお伝えするデメリットが生じます。
会社破産に合わせて社長も破産する場合
会社だけではなく、社長本人も連帯保証をしているなどで破産しなければならない場合、以下のデメリットが考えられます。
会社破産に伴い社長本人も破産した場合のデメリット
- 官報に載ってしまう
- 7年程度はクレジットカードが作れない
- 欠格自由がつくような仕事には就けない
例えば官報に載ってしまうので、見ている人はあまりいないとは思われますが、ご近所の方に見られる可能性がゼロではありません。
また、欠格事由のつくような仕事に就くことができません。
欠格事由のつく仕事
- 弁護士、司法書士などの士業
- 金庫番をする様な警備員などお金の絡むお仕事
欠格事由による職業制限については破産手続きを申し立ててから3~6か月程度で解除(復権)されることが多いです。
上記の内容以外では、基本的に「普通の人」として生きていくことができます。
どの様な場合に、社長は自己破産しなければならないのか?
法人名義での借入に対して連帯保証しており、その借入を返済できないのであれば社長本人も破産しなければなりません。
例えば連帯保証しているのが1社だけで、その1社だけ社長のポケットマネーで返せるということであれば、社長本人が破産する必要は無いかも知れません。
しかし、三善法律会計事務所でお受けしている破産のお手続きについては、中小企業の案件が多く、だいたい全ての借り入れに連帯保証がついてしまっています。
そのため、会社の破産手続きに合わせて社長本人も破産の手続きを行うケースがほとんどです。
社長の生活はその後どうなるのか?
法人だけ破産して社長が破産しない場合、社長の生活は何も変わりません。
ただし、法人も社長も破産する場合には多少の制約があります。
会社も社長も両方破産する場合の制約について
まず、会社破産の手続きには重要な3つの段階があります。
- 破産の申し立て
- 開始決定
- 破産の終了
この「開始決定」の後に稼いできたお金は自分のもので、自由に生活に使うことができます。
※東京地裁では申し立てから翌水曜日の午後17時に一斉に開始決定が出されます。
開始決定というのは、弁護士が裁判所へ申し立てをした後に、それが裁判所から認められて破産の手続きが開始されることです。
この開始決定のあとは、経営者は経済的には普通の生活を送ることができます。
開始決定から破産手続きが終わるまでの間は、社長宛てのお手紙は管財人へ転送されるので、プライバシーなく全て開封されてしまいます。
ただし、パソコンのメールやLINEなどは見られることはありません。
破産手続きの開始決定がされると、社長の財産というのは処分する権限が無くなります。
開始決定後は破産管財人という弁護士に手続きが移行されるので破産手続きが終わるまでの間に自分の持ってた財産が管財人によって処分されてしまいますし、お家を持っていれば現金に換えられて配当されてしまいます。
破産手続きで原則処分されてしまうもの
- 持ち家
- 自動車(残せる場合あり)
- 生命保険は解約されて、返戻金をもって配当される(残せる場合あり)
- 預金は20万円を超えるような預金であれば原則解約となる
自動車、生命保険など残せる条件についてはこの後解説します。
社長の手元にはどれくらいお金を残せるか?
まず、法人が持っていたお金は1円も残りません。※「法人のみ」「法人+社長」双方の場合
「法人と社長双方」が破産した場合、社長個人のお金に関しては、東京地裁の場合には現金99万円以下は残せます。
残せるお金の条件
- 20万円以下の預金
- 売却したら20万円以下である自動車
- 20万円以下の敷金
- 解約返戻金20万円以下の生命保険
- 他
原則、全部合わせて99万円以下であれば見逃してもらえ、手元に残すことができます。
残せるお金を増やせないのか?
当事務所代表 森 弁護士/公認会計士の回答
「贅沢をしたいから」という理由だと通りませんが、生活に困らない様なお金を残すご相談には乗っています。
やむを得ない支出、生活費が出ていくなど特別な事情がある場合。
- 社長の奥さんの介護費用
- 病気で医療費がかかる
- 親族が亡くなって葬式があるなど
ただし、少し良い生活がしたいので多めに欲しいなどは通らないので上記の様な特別なご事情がある場合となります。
破産をすべきかどうかの判断基準
以下の(1)(2)も期待が出来ない場合には破産するほかないなという判断基準になります。
- 債権者との任意の交渉で一旦支払いをストップしてもらうことで会社を立て直すことができる
- 全ての債権の支払いをストップすることで民事再生ができる
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会社破産にかかる期間
当事務所代表 森 弁護士/公認会計士の回答
だいたい相談から申し立てまで、1.2か月が目安になります。
東京地裁では申し立てから翌水曜日の午後17時に一斉に開始決定が出されると決まっていますが、
その開始決定から3か月程度で破産の手続きは終わります。
つまり、最短だと4か月程度ということになりますね。
急いでも申し立てまで1ヶ月~2ヶ月はかかります
申し立てをするのに残っている財産、過去の取引を紙に書いて裁判所へ報告しなければならないのと、
法人の今までのものを全てひっくりかえしてまとめる必要があるため、規模によっては1か月は厳しい場合があります。
取引量が多く把握するのに時間がかかるので頑張っても1か月半はかかるため、1~2か月はかかるというイメージを持って頂ければと思います。
会社破産の流れ
- 相談
- 依頼
- 申し立て
- 開始決定
- 会社の廃止
1,相談~依頼
当事務所の場合は決算書や、借入などを見させて頂いて「会社の健康診断」を無料で行っています。その結果、必要に応じて法人破産(倒産)のお手続きをお受けしています。
2,会社の破産(倒産)申し立て
法人の管轄の裁判所へ、会社の破産(倒産)の申し立てを行います。
社長が会社の借金の連帯保証をしていた場合は、社長個人の破産も同時に申し立てます。
3,開始決定
(2)の申し立てが受理されると、東京地裁の場合は翌水曜日の午後17時に一斉に開始決定がされることが決まっています。
開始決定の後に社長が稼いできたお金は自分のものになり、自由に使うことができます。
経営者はこの開始決定の後は経済的に普通の生活を送ることが可能です。
4,配当
管財人によって、会社の機械や不動産などの資産が換金され、債権者へ配当されます。
5,会社の廃止
会社が法律上無くなったという状態です。
会社の借金、社長の借金も免責された状態で、倒産した企業の債権者はその債権を貸倒引当金という損金扱いにできるのでその分税金が安くなります。
会社破産にかかる費用
裁判所に納める費用(東京地裁の場合)
負債額 | 裁判所への予納金 |
---|---|
5000万円未満 | 70万円 |
5千から1億円 | 100万円 |
1億から5億円 | 200万円 |
5億から10億円 | 300万円 |
10億~50憶円 | 400万円 |
法人 | 個人(自然人) | |
---|---|---|
申し立て手数料 | 1000円 | 1500円 |
郵券など | 4,200円~6000円 |
債務総額5千万円~1億円の会社破産にかかる費用の総額
裁判所に納める予納金 | 100万円 |
---|---|
実費預かり金 | 67,00円~ |
弁護士費用 | 100万円~ |
合計 | 約2,006,700円 |
お金が手元に無い方の対応はできるか?
財産状況お伺いして、生命保険、自動車など売れるものがあれば破産の費用に回して頂くという対応をとることもあります。
破産の前に色々と処分すると裁判所からおしかりを受けることもあるので、われわれの常識の範囲内でアドバイスをしています。
無料会社の破産・再建のご相談
- 債権者との任意の交渉でなんとかなるのか
- 段階的な交渉で話をつけなければならないのか
- 民事再生や破産手続きを検討すべきか
会社の問題も早期発見することで穏便に解決しやすくなります。
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